【社長のひとりごと】No.65-カステラは洋菓子?和菓子?

 カステラは洋菓子なのか、和菓子なのかと問われて、即答するのは難しいように思われます。歴史上では大航海時代にあたる安土桃山時代(1568~1600)に、ポルトガル人がわが国にもたらしたといいます。いわゆる南蛮菓子で、イエズス会の宣教師たちが布教のために使ったという記録もあるようです。この由来でいけば洋菓子といえそうですが、すでに500年も経っており、いまやわれわれ日本にすっかり馴染んでいることからすると、和菓子と呼んでもおかしくはなさそうです。

 俳人の長谷川櫂は、そのことが気になっていてある時(赤坂虎屋の会議室で開かれた和菓子の座談会で)、「和菓子と洋菓子は何によって分けるのですか。チョコレートやショートケーキは洋菓子とされていますが、カステラや金平糖は和菓子なのか、洋菓子なのか……」と切り出しました。すると座談会のメンバーか、その会の主催者だった和菓子業界の団体の誰かが即座に応えてくれたということです。

――ああそれは江戸時代の終わりまでに日本で完成していたお菓子が和菓子です。南蛮菓子のカステラも金平糖も和菓子です。

 つまり、江戸幕府十五代将軍・徳川慶喜が天皇に政権を返上した大政奉還(1867)までに完成していたお菓子が和菓子ということになり、それ以降に西洋から伝わったお菓子は洋菓子となります。

 特定された時期で区分するという明快な分け方に、長谷川氏は「材料とかじゃないんだ」とかすかに失望しながらも、「本質的に分けられないからこそ便宜的に時期によって分けるしかない」という手法に「なるほど」と大いに納得したとあります。

 さて、ならば鯛焼きはどうなのか、小豆の餡が入っているので和菓子かというと最近はカスタードクリーム等を使ったりして洋菓子っぽい、それに鯛焼きを考案したのは麻布十番にある浪花屋総本店が明治42年(1909)といいますから、前段の和菓子業界の基準でいうと和菓子ではないとなります。長谷川氏は「あれはいったい和菓子なのか洋菓子なのか」と問いかけます。            (『和の思想 日本人の想像力』岩波現代文庫)

 しかし長谷川さん、尾頭付きの鯛焼きは「西洋から伝わった」ものじゃないでしょうから、どうなんでしょう。チョコレートやカスタードクリームなんか入っていたら、交流が加速する現代風に「シン和菓子」とか、別ワクを設定してはどうでしょう。