【社長のひとりごと】No.63-文化の多様性は<心のあり方>の多様性

 関東のビジネスの世界では昔から(いつ頃かは未確認)「大阪で『考えとくわ』は断わりの意味」と笑い話ではなく言い伝えられていました。すでに死語になっているかもしれませんが、今は「知らんけど」というのがまさにその裏返しの言葉じゃないかと思っています。京都の「ぶぶづけ」なんかも、背中を冷たい風が吹きおりていきますね。それらの背景となる文化を知らなければ「なんでやねん」の世界です。

 文化心理学の北山忍は訪れたケニアのナイロビで、タクシーの運転手に「俺には兄弟がいる。でも彼とは絶対仕事は一緒にしない。彼は近すぎて油断できない。兄弟は競争相手さ。だって、彼は俺の仲間だからな」と言われ、戸惑ったといいます。私たちならば、「仲間とは協力し合うものではないのか?なぜ『仲間だからこそ』競争するのか?」と。「兄弟は競争相手」とは日本でもよく言われますが、その前後の言葉との流れでいうと、とても違和感を覚えます。             (『文化が違えば、心も違う?』岩波新書)

 イスラム文化圏の北アフリカを除いて、サハラ砂漠より南の全域を「サブサハラ・アフリカ」と呼ぶそうです。この地域は2040年までに世界人口の25%以上を占めると予測されています。この広大な地域は文化的・言語的多様性に満ちていて、例えば約2000の言語が存在し、それは全世界の3分の1にあたります。

 人類学者のC・レソロゴルらがケニアと米国で行なった行動経済学の実験(独裁者ゲーム)結果をみてみます。参加者をランダムに「独裁者」と「フォローワー」に分けて、ペアにしますが、誰とペアになったかは知らされません。独裁者には10ドルが渡され、フォローワーにその一部あるいは全部を渡す自由が与えられています。その行為を匿名にするか、公表するかという条件の違いによる反応はどうだったのでしょう?

・米国での結果:匿名条件=10ドル全部を自分のものにする者はほぼいなかったが、一方半分を渡した者もあまりおらず、その間の金額を渡していた。
        公表条件=ほぼ全員が半分の5ドルを渡していた。

・ケニアの結果:匿名条件=米国の結果とあまり変わらなかった。
        公表条件=匿名条件と結果は変わらなかった。

 私たちは、自分の利益の最大化は「望ましい」、「やむを得ない」という社会規範があり、仲間内での他者の犠牲も容認される<心のあり方>を認識しておく必要があります。