梨木香歩のエッセイで知った、ウクライナ民話の『てぶくろ』(エウゲーニ・M・ラチョフ絵、内田莉莎子訳 福音館書店)は1965年に発刊された絵本ですが、現在においても、そして子供たちにとってだけでなく、私たちにとっても面白く、興味深いお話しです。概略は、
――おじいさんが子犬と森を歩いていて、手袋の片方を落したまま行ってしまいました。すると「食いしん坊ネズミ」が来て手袋に潜りこんで暮らしはじめます。そこへ「ぴょんぴょんガエル」が跳んできて「私も入れて」というと「どうぞ」と応え、二匹になりました。
つぎに「速足ウサギ」が走ってきて「ぼくも入れてよ」といい、二匹は「どうぞ」と迎えます。もう三匹になりました。
そこに「おしゃれギツネ」がやってきて「手袋に棲んでいるのはどなた?」、中の三匹は「食いしん坊ネズミとぴょんぴょんガエルと速足ウサギ」と応えます。キツネは「私も入れて」といって入り、これで四匹になりました。
おや、「灰色オオカミ」が来ました。「だれだ?手袋に棲んでいるのは」、四匹がこれに応えると「おれも入れてくれ」。四匹は「まあ、いいでしょう」と、これで五匹となりました。
それから「牙持ちイノシシ」がやってきて「私も入れてくれ」となり、中の五匹はさあ困りました。「ちょっと無理じゃないですか?」といってもイノシシは「いや、どうしても入ってみせる」と。五匹は「それじゃ、どうぞ」となり、もうこれで六匹です。
手袋はぎゅうぎゅう詰めになりました。
その時、木の枝がパキパキ折れる音がしてクマが現れました。「だれだ、手袋に棲んでいるのは?」というので、中の六匹が「食いしん坊ネズミとぴょんぴょんガエルと速足ウサギとおしゃれギツネと灰色オオカミと牙持ちイノシシ。あなたは?」と尋ねると、クマは「ウオー、ウオー。のっそりグマだ。わしも入れてくれ」といいます。六匹は「とんでもない。満員です」といいますが、クマは「いや、どうしても入るよ」と無理をいいます。窮屈な中にも先住の六匹は「しかたがない。でも、ほんの端っこにしてくださいよ」となりました。
これで七匹。手袋は今にもはじけそうです。
いっぽう森を歩いていたおじいさんは、手袋が片方ないのに気づき、さっそく探しに戻りました。むくむく動いている手袋を、おじいさんの子犬が先に見つけ「わん、わん」と吠えました。中の七匹はびっくりして手袋からはい出すと、森のあちこちへ逃げて行きました。
そこへおじいさんがやってきて、手袋を拾いました。
とさ。歴史のなかで醸成されてきたウクライナの人たちの心象のように感じられますね。
