【社長のひとりごと】No.58-人体の価格は一体いくら?

 

 かつて日本の総理はハイジャック事件において「人の命は地球よりも重い」と言いました。『人体大全』(桐谷知未訳 新潮文庫)のビル・ブライソンはその冒頭で「アメリカで中学校に通っていたころ、生物の先生に、人体を構成している化学物質はすべて金物店で五ドルかそこらで買えると教わったことがある。(略)二ドル九十七セントだったかもしれないし、十三ドル五十セントだったかもしれないが、千九六〇年代の貨幣価値から考えてもずいぶんと安上がりだった」と記しています。確かにずいぶんと安上がりです。

 ヒトを作るための材料費がいくらなのかは、その路の専門家が遊びとして試算してきたそうで、ブライソンによると最近の中で最も妥当と思われる試みは、2013年のケンブリッジ大学科学フェスの一環としてRSC(英国王立科学会)のものだそうです。RSCは、典型的な体格の俳優・ベネディクト・カンバーバッチ氏(ちょうどゲストディレクターだった)を作るため必要なすべての元素を集めるといくらかかるのかを計算しました。

 RSCの推定では、ヒトを作るには全部で59種類の元素が必要になり、そのうち6種類(炭素、酸素、水素、窒素、カルシウム、リン)が成分の99.1%を占めていて、残りの大半は少し意外なものになります。いくらかのモリブデンやバナジウム、マンガン、それに錫や銅は必須で、大半のうちいくつかの元素の必要量は極めてささやかなものだとのこと。たとえばコバルト原子は「その他すべての原子九億九千九百九十九万九千九百九十九と二分の一個につきたった二十個、クロム原子の場合は三十個にすぎない」そうです。
最大の成分は体内の空間の61%を満たす酸素ですが、人体が風船のようにフワフワとしていないのは、たいていは水素(10%を占める)と結合して水になっているからです。

 酸素代は14ドル、水素は26ドルちょっと、窒素(2.6%)は40セント、炭素は69,550ドル、大半の量の少ないものが単価は高くなりますが、代金はそれほどでもありません。カルシウム・リン・カリウムが合わせて73,800ドルで、トリウムは33セント、錫は6セント、ジルコニウムとニオブは各3セントとなります。

 RSCによると、B・カンバーバッチ氏というヒトを作るための総費用は151,578ドル46セントとなりました。もちろん、材料費だけであって、製造費用やノウハウ代、消費税等々は含まれていない。さて、私たちの<命>までに、あとどれくらいが必要?