【社長のひとりごと】No.52-働かないおじさんがいる会社は強い

 資本主義社会における会社員には、猛烈タイプの『サラリーマン金太郎』や島耕作シリーズの主人公群と、これまたもう一方の側の典型として『釣りバカ日誌』の浜ちゃんや『美味しんぼ』の山岡士郎、あげくは警官としては異色の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津勘吉といった、あまり働かない(?)タイプの主人公群があります。

 働かないといっても浜ちゃんは釣りキチだし、山岡は卓越した舌と食に関する豊富な知識を持っており、両さんに至っては賭け事をはじめ多趣味かつそれぞれに関して一家言を持っています。つまりこの主人公たちは揃いも揃って、会社員としては勤務態度がはかばかしくなく会社の仕事に対してもあまりやる気がなくと、したがって上司からはしょっちゅう怒鳴られてばかりの面々ですが、どうやらストーリーのキモとしては「彼らがいないと困る」というのが共通点のようです。他の共通項としてはいずれも安定企業に(両さんは公職)勤務していることです。いってみれば、会社が儲かろうが儲かるまいが、そんなことにはあまり関心がないようです。

 集団の法則としてよく知られている「働きアリの法則」は「よく働く:普通に働く:働かない=20:60:20」という割合とされています。その割合がなぜ「法則」なのかというと、ある会社が業績アップを目指したとして「働かない20%を駆逐しても、そのうち普通に働く60%のなかから一定割合が働かなくなり」、集団における割合は変わることなく、結局、元の木阿弥となります。

 ここからは理屈になりますが、集団の法則を踏まえると、いかに働かない20%だからといって、集団のなかで全然役に立っていないかのというと、仮にそれらを取り除いたとしても、集団には「法則」が働くわけですから、社会構造の原理的なところに関わっているに違いありません。働かない20%は、働かないからといってそれが不要なわけではなく、まったく社会的な役に立たないというわけでもなさそうです。それが社会の健全なあり方だとすれば、働かない20%を含む集団というのは多様性を保持しえているわけで、それこそが普通で当りまえの集団といえそうです。働かないおじさんがいる会社は、その会社の良し悪しを見極める尺度の一つかもしれませんし、ほんとうに柔軟で強靭な会社なのかもしれません。(『働かないおじさんは資本主義を生き延びる術を知っている』侍留(しとみ)啓介 光文社新書)