【社長のひとりごと】No.47-<名前>の行くへ

 国政の場でも論戦となる夫婦別姓選択性ですが、世界的にも日本のあり方は特異とされています。歴史的にみれば夫婦同姓とされたのは明治31年(1898)とのことですから、たかだか120年余りになります。すべての国民に苗字の義務付けされたのが明治8年(1875)ですから、夫婦同姓に着地するまでの間、相当に何やかやとあったに違いないと容易に想像できます。で選択的別姓ですが実際には、戦後の改正民法で夫婦同氏が規定されてから間もなくの1954年あたりから論点に上がっているようです。それからずいぶんと経っているわけで、日本人にとっては世間のしがらみのように絡まった問題のようです。

 さて氏名の名のほうにも目をむけてみると、古くから女性の名前は二音節(あるいは三音節)が多いようです。けれども例えば「あき」という女性も、生活の場では「おアキさん」と呼ばれることも多々あるわけで、日本語の収まりとしてはリズム的に一般的に二音節・三音節となるようです。

 今でこそ「私は<かほり>で、<かおり>や<かをり>や<香織>や…じゃない!」と主張するわけですが、日常的に署名のない世界ではどれも「KAORI」で同じになってしまいます。事実、毎年作成されていたという「宗門人別帳」には、年によって「ほ」になったり「を」になったりと、記した役人によって違っていたようですから、文字の世界ではけっこう流動的で許されていたのかもしれません。同姓同名といえば同じ文字で同じ読みの人をいうわけで、文字が流動的だった世界に比べるとずいぶんと整理されてきたわけですが、今やマイナンバーになりましたから、同姓同名の人々も個別に数字で識別される時代となりました。

 名前といえば、近年「キラキラネーム」と呼ばれてフリガナを振ってくれないととても読めない名前が流行りとなっています。「心愛」という名前は「ココア、ココナ、ミア、コア、ココロ、リズナ、コノア、ミアビ等」の読み方があるそうです。男性名も「大翔」と書いて「ハルト、ヒロト、タイガ、ヤマト、タイシ、ダイト、タイショウ、ダイト、マサト、ツバサ、ソラ、タイゾウ、ハルマ、ダイキ、ダイショウ、ヒロキ、タイセイ等」と負けていません。              (『女の氏名誕生』尾脇秀和 ちくま新書)

 日本語の特性としての<音のイメージ>と<文字のイメージ>の両端に引っ張られながら、これから私たちの<名前>はいったいどこへ行こうとしているのでしょう。