【社長のひとりごと】No.44-「漢字」に学ぶあれこれ

 「Coca-Cola」を中国語で「可口可楽」と書くことはよく知られています。それはCoca-Cola社が上海に進出した1930年代に行った中国名の公簿で決まったといいます。ちなみに採用された人は莫大な賞金を手にしたそうですが、分かりやすくて、字面としてもなかなかピッタリしているような気がします。私たちの日本語には仮名がありますので「コカコーラ」と書きます。日本語が外国語を取り入れやすいのは、音に対応する仮名があるからですが、もちろん国内でしか通用しない和声外国語もあります。中国語ではエアコンを「空調」(これは私たちも使っていますねぇ)、カラーテレビは「彩電」、タクシーは「出租車」(香港では音訳して「的士」)等々と、漢字の意味に引かれる傾向が強いようです。

 ところで、この世界に漢字はいったい幾つあるのでしょう。わが国が世界に誇る『大漢和辞典』(大修館書店)には「五万字」が収録されています。これを凌ぐ「約六万字」を収録したとする『漢語大字典』が中国で出版されたのは1986年とのことです。ならば漢字はいったい幾つあるのかというと、それがよく分からないそうで、永遠に確定することができないといわれています。三千年以上の時間を積み重ねてきた漢字は、この間一貫して表意文字であり続けていて、その時その時の、ある事物や概念を表わすために作られてきたわけで、今や発生から現在までの歴史のすべてを把握することは不可能というわけです。

 さて漢字の数は膨大ですが、普段から私たちが使用するのは何文字ぐらいあるのでしょうか?かつては必読書と呼ばれ、かの京都学派が「子ノタマワク」と読むとかエラブッていた『論語』は1,512種類の漢字でできているそうです。私たちの常用漢字(2010年)が2,136字ですから、はるかに少ない漢字で成り立っています。幾つあるのかということと、幾つ必要かということは、全くの別問題になります。(『漢字のいい話』阿辻哲次 新潮文庫)

 幾つもある異体字を合理的に統合することも必要でしょうが、一方で名前や固有名詞の漢字を同様に整理していいかどうかは違う土俵での議論になりそうです。例えば「渡辺」さんには「邊」や「邉」もあります。「宮崎」さんにも「﨑」や「嵜」と、日常的に出会います。これらを単純に統一しようとすると大問題になりそうですね。どうやら時と場合に合わせて使いこなす、いわば漢字の使用はTPOで、ということになるのでしょうか?