2024年のデータによると世界一の長寿国は日本で84.5才、二位がシンガポール(83.9)、三位が韓国(83.8)と続いています。トップスリーがいずれもアジアの国々だというのは注目されます。ちなみに男性は日本が二位(81.7)で、女性は日本が堂々の一位(87.2)ということです。
健康体であるかどうかは別にしてヒトには、というか生き物という個体には寿命があります。私たちは時間とともに「動作が緩慢になり、活力と弾力が徐々に失われ、自己修復能力が避けがたく着実に減少していくこと――ひとことでいえば老化――は、すべての種に共通している」(B・ブライソン)という宿命にあり、やがて訪れる<死>は避けがたく、一人ひとりに必ず訪れます。
フランス人のジャンヌ=ルイーズ・カルマンは最も長生きした人として知られています。記録では1997年に122才164日という長寿を全うしました。さて、このジャンヌさんは生前、判断を誤ったある取引により莫大な利益を受けることになりました。
「一九六五年に資金難に陥ったとき、カルマンはある弁護士に、毎月二千五百フランを払ってくれれば、死後にアパートメントを譲り渡すと約束した。当時カルマンは九十歳だったので、弁護士にとってはかなりよい取引に思えた。ところが、その契約を結んだ三十年後に弁護士はカルマンより先に死亡し、手に入れられなかったアパートメントのために、九十万フラン〔十八万四千ドル相当〕以上もカルマンに払い続けることになってしまった。」という、当事者同士にすればなかなかスリリングな、他人からみれば「この上なく愉快」な晩年を過ごすことになりました。
相手の弁護士にすれば、高齢のジャンヌさんがそんなに長生きするとは想定していなかったでしょうし、人助けと同時に割のいい投資と考えていたのでしょう。また一方のジャンヌさんにしても、当面の資金繰りの工面がたてばよかったわけで、自分がそんなに長生きするとは考えてもいなかったに違いありません。双方がそれぞれ「あれれ」と思い始めた時にはシナリオをはるかに超えた状況に至ったわけで、人助けもビジネスも長寿には太刀打ちできない一例となりました。 (『人体大全』ビル・ブライソン 桐谷知未訳 新潮文庫)
どうやら人間、どんなにジタバタするとしても、長生きはした方がよさそうです。
