【社長のひとりごと】No.37-お客様は神様か、王様か

 その昔、国民的大歌手だった三波春夫は「お客様は神様です」(1961年に舞台で話して反響を呼び、その後レッツゴー三匹が流行らせた)と言いました。一方で経営の神様と呼ばれた松下幸之助は「お客様が王様です」(海外出張でフィリップスの経営者の「お客様は王様と考えている」との発言に感銘した由)と言いました。どちらの言葉にも、それぞれのニュアンスがあるのですが、その後、日本橋高島屋のコンシェルジュは「お客様は神様ではなく王様である」としました。なぜなら「王様は無理難題を言うが、神様は無理難題を言わないため」だとか。ある意味、とても現実的で日本的な着地をしたような気がします。

 日本的といえば、かつての高度経済成長期に「ダイエー・松下戦争」が勃発しました。スーパー大手のダイエーと家電メーカー大手の松下電器産業とが、商品販売価格をめぐって対立しました。消費者主権を掲げた中内ダイエー代表と、その経営理念が「水道哲学」と知られる松下幸之助代表の、理念の闘いとなりました。水道哲学とは「水道の水は加工されて価値があるのに、(略)生産量があまりに豊富であればタダ同然になるのだと悟り、貴重な生活物資を水道の水のように無尽蔵にして、価格を安くして貧困をなくすことを自らの使命」としたことを言います。バリュー主義のダイエーと正価主義の松下のぶつかり合いとも呼べます。

 それは1964年にダイエーが松下の電化製品を安売りした際、その販売価格がメーカー値引きの許容範囲を超えていたため松下が出荷停止の措置を取ったことに端を発します。ダイエー側は松下の措置を独禁法違反だと公取委に訴え、公取は1967年に松下への違反勧告を出しました。松下側はこれに対して徹底抗戦の姿勢を見せましたが、一方、70年からは消費者団体による松下のカラーTV買い控え運動が起こります。その影響が業績にまで及んだため、ついに松下は1971年に公取委の勧告を受諾しました。現在からみればしごく当たり前の結果といえますが、高度経済成長期にあった日本における、とても現実的な着地だったのではないでしょうか。     (『消費者と日本経済の歴史』満薗勇 中公新書)

 お客さまといい、消費者といい、このところ神様というより王様となって、その主張をやたらと振り回している輩がいるやに見受けられます。通常サービスに支障が出るとして、行政もカスハラ対応への窓口対策を始めたようです。<度を超した顧客>が問題となっていますが、単純に割り切れるものでもなさそうな気がします。どうやらその傾向は今後も、増えることはあっても減ることはないようですね。