【社長のひとりごと】No.17-話し言葉の現場は揺れている

 

 ふだんの会話等においてある言葉が本来とは違う形で発音される場合があります。例えばsimulation(シミュレーション)を「シュミレーション」と言っているのを聞いたことはありませんか?「間違っている」と目くじらを立てる前に、それでも意味は伝わっていることに注目しましょう。例えば、

1.その場にいた人ゼーインに電話をして

2.大学のジギョーが終わってから

3.(まー)ユイツ気に入らないっていうのが

4.家庭のセンタッキで洗うのには

5.言葉以外のコミニュケーションにも慣れて

 等々も、戸惑うことなく(まったくないことはないにしても)その言わんとしていることが分かります。それらは単なる言い間違いではなく「多くの人によって繰り返し使用される形である場合、それらは「発音のゆれ」と考えられます。「ゆれ」とは、ある一つの言語表現が複数の実現形式を持ち、それらが併存している状態」だといいます。実際に、その「ゆれ」はどれ位の頻度で現れるのでしょうか。(『日本語の大疑問』国立国語研究所 幻冬舎新書)

  (本来の発音)(本来とは異なる発音)
1.ゼンイン      19.0%ゼーイン      81.0%
2.ジュギョー     64.3%ジギョー      35.7%
3.ユイイツ      23.1%ユイツ       76.9%
4.センタクキ     16.7% センタッキ     83.3%
5.コミュニケーション 50.0%コミニュケーション 50.0%

 わが身を振りかえると「2~4」は意識しない限り普段使いしている感があり、「5」もあるいは無意識に言っているかもしれません。言葉が使われる現場での「ゆれ」は時間の経過とともに正式に認められることにもなりそうです。そうした例でいえば「新しい」と「新たに」の二つは両方とも正しい形ですが、もともとは「アラタし」だったのが平安時代に「アタラし」と音位転換し、その後定着して現在に至っているそうです。

 いつの時代も「言葉は乱れている」と指摘されますが、けれどもそうした「言葉のゆれ」こそが日本語を大胆に、そして柔軟に変化していく原動力なのではないでしょうか。