MP人間科学研究所代表で心理学者の榎本博明によると、人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を担当してきた国立情報科学研究所の新井紀子が実施した学力調査で、「人工知能は膨大なデータを蓄積して傾向を捉えるのが得意だが意味は理解できないのに、8割の高校生が文章の意味を理解できないAI「東ロボくんの成績に及ばないのはなぜか」を突き止めるために実施した問題が以下の例題です。
――幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
上記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。
1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。――
正解は「異なる」ですが、正答率は中学生で57%、高校生で71%だったそうです。文章が能動態から受動態になるだけで、文章の意味が混乱してしまう学生の割合がけっこうあるということです。
榎本は「筆記用具ももたずに授業に出る学生がけっして珍しくない。大学によっては(略)多数派だったりもする」そうで、何故かを尋ねると、「パワーポイントで授業し、映写のコマの印刷物を配ってくれるので、ノートは取らない」と言われるばかりか、パワーポイントを使わない榎本には「先生の授業のためだけに筆記用具をもって来なくちゃいけない」と不満を言う輩もいる始末。目の前の映写画面を見るだけでノートを取る習慣が失われた、あるいは初めからノートを取る習慣が身に付いていない、つまり受け身になっているだけの風潮に榎本は以下の指摘をします。 (『思考停止という病理(やまい)』榎本博明 平凡社新書)
- 授業や講演のノートを取ったり、ちょっとしたメモを取る習慣は、もの事を深く理解したり、自分なりの考えを深めるために、とても大事である。
- ポイントとなる箇所に線を引いたり、思いつきをメモしたり、「?」マークを記したりして、自分の理解度をチェックできるし、改めて調べてみることでさらに理解が深まる。
- 発想を練る際も、思いつくことをメモしながらあれこれ考えることで、その発想が膨らんだり、考える筋道を客観的に見ることができて考えが纏まったりする。
こうしたことの調査研究によると、ノートの記述量が多いほど成績の良いことが分かったそうです。面倒臭いと思わず、メモをする習慣は持っておいた方がよさそうです。
