いたずら盛りのころTVの『忍者部隊月光』や『隠密剣士』、映画では『赤い影法師』や『伊賀の影丸』等の影響か、忍者の武器である手裏剣をブリキ板で作ったりして遊んでいました。十字手裏剣はまあまあの形になりましたが、八方手裏剣は上手く作れた記憶がありません。そのうち、ちょっとした拍子で怪我をするということが子供心にも分かると、菓子箱等の厚紙に変わりました。
忍者道具のなかで、けっこう渋い役目をするのが「まきびし」です。路面にばら撒いて敵を傷つけるという武器ですが、これが相当に厄介でした。針金でそれらしく作っても、扱いにくいし重いしで、こんなものが本当に役に立ったのかと思いました。画面では黒い鉄製(?)の「まきびし」が地面に格好よく撒かれますが、やってみるとそうそう簡単には散らばってくれません。
案の定、実際には棘のある菱の実が使われていたようです。重くて持ち運びに不便で、しかも高価な鉄を地面に捨てるようなことは、さすがに勿体無いというわけです。忍者が使用したのは棘が四本あるオニビシという菱の実だったそうで、これだと持ち運びに軽く、かつ心おきなく投げ捨てられるというわけです。
しかもこの菱の実の中に入っている種子はでんぷんを豊富に含んでいて食用にもなったということです。勝手な想像ですが、携帯していたのは食用が主であって、武器としての使用はあまりなかったのではないでしょうか。目立たないことに徹する彼らが、むやみに正体を露出するような危険を冒して、その証拠をばら撒くということは考えられません。
菱は昔から食べられていたようで、桃の節句の雛壇に供える「菱餅」ですが、本来は「菱形の餅」という意味ではなく、菱の実から作られたといわれています。現在は「菱餅」といえば、お米から菱形の餅を作るようになりました。ちなみに「菱形」という言葉も菱の実が由来となっているそうで、じっさいの実が四角形の「ひしゃげた形」だからだといいます。 (『スイカのタネはなぜ散らばっているのか』稲垣栄洋 草思社文庫)
ところで今から思うと忍者の武器で、致命症を与えるほど殺傷力のあるものはあまりなかったようですね。薬草の扱いにも長けていて毒物も扱ったかもしれませんが、どちらかといえば病気や傷等への対処が主だったのではないでしょうか。でなければ、敵の領内にありながら長らく「忍び=草」でいることはできなかったのでしょうから。
